タイムトラベル 本と映画とマンガ

 本ブログは、タイムトラベルファンのために、タイムトラベルを扱った小説や論文、そして映画やマンガなどを紹介しています。ぜひ気楽に立ち寄って、ご一読ください。

 タイムマシン、タイムトラベル、タイムスリップ、時間ループ、パラレルワールド、時間に関係する作品を収集しています。まだまだ積読だけで読んでいない作品がたくさんあるのですが、順次読破したら本ブログにて感想を発表してゆきますね。

デイ・トリッパー

デイトリッパー
★★★
著者:梶尾真治

 デイ・トリッパーとは幻覚剤「AMT」の通称であり、ビートルズの楽曲でもある。また日帰り旅行者という意味もあるが、この言葉には「ちょっとだけ(クスリで) トリップする人」という意味も隠されている。
 本作では過去に跳ぶための遡時誘導機の名称であり、このマシンを所有している女性が経営するカフェの名前でもある。また過去に跳ぶ前に精神を安定させるために飲む薬のことを暗示しているのかもしれない。

 主人公の香菜子が最愛の夫である大介を亡くして失望していると、もう一度大介に逢ってみないかという女性が現れる。香菜子はもう一度夫に逢いたい一心から、半信半疑でその女性の経営するカフェ『デイ・トリッパー』を訪れ、遡時誘導機に搭乗して夫が生きている時代へタイムスリップするのである。ただここでいうタイムスリップとは、心だけが過去の自分の中に跳んでゆくという方式なのであった。

 心だけが過去に跳ぶという仕組みは目新しいかもしれないが、70歳になっても相変わらず青春しているところが梶尾真治の素晴らしいところだろう。ただストーリーとしてはありきたりでいま一つの感があった。まあこの年だからしょうがないか…。

評:蔵研人

タイムスリップ明治維新

★★★☆
著者:鯨統一郎

 著者のタイムスリップシリーズは、『タイムスリップ森鴎外』に始まり、本書の『タイムスリップ明治維新』以下、『タイムスリップ釈迦如来』、『タイムスリップ水戸黄門』、『タイムスリップ戦国時代』、『タイムスリップ忠臣蔵』、『タイムスリップ紫式部』、『タイムスリップ聖徳太子』、『タイムスリップ竜馬と五十六』、『タイムスリップ信長vs三国志』の10編が数えられる。その中でも著者自身が1、2を争う出来だと豪語しているのが本作なのである。

 初回作の『タイムスリップ森鴎外』では、森鴎外が現代の渋谷にタイムスリップし、高校生の麓うららたちと知り合い、助けられながら過去に戻って行くという話だった。ところが今回は、現代人の麓うららが明治維新にタイムスリップし、そこで7年間も過ごすことになるのである。そして薩摩藩士の中村半次郎に処女を捧げ、そのあと桂小五郎、岩倉具視ともセックスすることになるのだ。

 前作の『タイムスリップ森鴎外』ほどではないが、やはりかなりハチャメチャでご都合主義な展開ではあったが、相変わらず読み易いのであっという間に読破してしまった。かなり軽過ぎるかもしれないが、寝転びながら楽しんで歴史の概要を掴みたい人には受けるかもしれないね。

評:五林寺隆

タイムスリップ森鴎外

★★★☆
著者:鯨統一郎

 大正時代の文豪・森鴎外が何者かに命を狙われ、崖から墜落して意識を失ってしまう。だが気が付くとそこは…な、なんと現代の渋谷道玄坂下だったのである。
 そしてチンピラと揉みあいになっているときに、超ミニスカートの女子高校生うららと七海に助けられるのだ。これを機に鴎外は彼女たちとその仲間四人と親しくなり、なんとか現代で生活できるようになる。
 大正人にも拘らず飲み込みが早く適応能力抜群の鴎外は、和服を脱ぎユニクロの服を着て、髪を金髪に染めサングラスをかけて、ウォークマンを聞きながら渋谷の街を闊歩する。さらにはケータイで女子高生にメールをし、カラオケボックスで熱唱し、な・な・なんと、渋谷の街頭でラップまで披露するのである。だが安穏とした日々は長く続かず、さらに彼の命を狙って追いかけてくる刺客が二人現れるのだった。

 と……なにせ奇想天外ハチャメチャな展開のタイムスリップ小説なのだ。だが読み易い文章でテンポ良く話が弾むので、遅読の私でもあっという間に読了してしまった。ただ犯人捜しの部分はかなりこじつけ感が漂いくどさも残ったかな。
 いずれにせよ森鴎外に抱いていた「堅いイメージ」がぶっ飛んでしまうことだけは間違いないだろう。ちなみに著者である鯨統一郎は覆面作家と言われているのだが、「タイムスリップシリーズ」10作以外にもかなりの数のシリーズものを手掛けているし、全般的にもの凄い著作量をこなしているではないか。もしかすると「鯨統一郎」とは個人名ではなく、数名で構成する小説プロダクション名なのかもしれないね。

評:蔵研人

古い腕時計 きのう逢えたら…

★★★☆
著者:蘇部健一

 不思議な古い腕時計。この時計をある時計屋に持ってゆき修理を依頼すると、なんと昨日をもう一度体験できるのである。そうした小話がアンソロジー形式で8話収録されている。

片想いの結末
 片想いしている彼女のハートを射止めるため、トラックに撥ねられた彼女を助けるために昨日に戻るのだが……

四番打者は逆転ホームランを打ったか?
 少年の命を救うため、前日の失敗を繰り返さないように、もう一度バッターボックスに立つ病身の四番打者

最後の舞台
 漫才グランプリに優勝するため、昨日に戻ってもう一度瀕死の相方と舞台に立つ漫才師

起死回生の大穴
 借金返済のため、結果の分かっている昨日の競馬レースに有り金をはたき、人生の全てを賭けて挑む男

おばあちゃんとの約束
 入院しているおばあちゃんと約束した「SF小説大賞」の結果を待つ男のこころ

明日に架ける橋
 ひき逃げ事件の犯人が、時効前日に銀行強盗に遭遇してしまう話

運命の予感
 最後のプロ棋士試験のプレーオフの日。対戦相手がやってこなかったため不戦勝となるのだが、なにかすっきりしない囲碁棋士が、もう一度昨日を繰り返す話

エビローク
 これは前述した『四番打者は逆転ホームランを打ったか?』の顛末である

 以上、昨日をやり直すことによって、人生が大きく変わってしまういろいろな男たちの話である。全話に不思議な時計屋さんが関わってくるところが、なんとなく『笑ゥせぇるすまん』のようで笑ってしまった。
 また平易な文体で読み易く、心が打たれて涙がこぼれる話もあり、そこそこ楽しめるはずである。ただ本書は連載物ではなく書下ろしだということで、短編集にするよりも、「群像劇風の長編」としてまとめたほうがもっと感動できる小説に仕上がったのでは、と思うのだがいかがであろうか。

評:蔵研人

ReLIFE リライフ

★★★☆
製作:2017年 日本 上映時間:119分 監督:古澤健

 またまた邦画の常とう手段であるマンガの実写映画化作品である。従ってかなりいい加減で荒唐無稽なストーリーなのだ。ただアニメ化されたくらいだから、そこそこ面白いということにしておこう。
 せっかく大学院を卒業したものの、新卒入社した会社を3カ月で自主退職してしまった海崎新太27歳。その後何度も再就職の面接を受けるのだが、前社を3カ月で退職したことが祟り、どこの会社でも不合格となってしまう。

 それでなんとかコンビニのバイトで生活の糧を凌いでいる海崎だったが、ある日「リライフ研究所」所員を名乗る謎の男が現れる。そして男は海崎に、薬で見た目だけ若返り、1年間高校生活を送るという実験をしないかと言う。
 余りにも胡散臭くて気が進まない海崎だったが、生活の保障が得られると聞いて、半ばヤケクソ気味に被験者になることを承諾。こうして27歳の男が、10歳年下の女子高校生との恋に頭を悩ませ、青春を謳歌する高校生活がスタートするのだった。

 それにしても、本作はタイムトラベルもののようで、実はそうではないみたいだ。つまり主人公が10年前にタイムスリップするのではなく、外見だけが10歳若くなり、そのまま現在の高校へ通うというだけではないか。従ってタイムトラベルものではなく、学園恋愛ものだと考えて観賞したほうが良いだろう。
 またこの実験が終わると、体験したことは全て主人公の記憶から消去されてしまう。さらに主人公と接触した人々の記憶の中からも、主人公の存在自体が喪失してしまうのである。
 どうもこの設定には無理があり過ぎる。主人公の記憶だけなら、薬や手術などで切り取ることが可能だが、クラスメイトや先生など、主人公と接した人すべての記憶を操作することは不可能ではないか。いくら原作がマンガだからと言っても、このあたりの矛盾はしっかりとフォローしておくべきだろう。

 またラストのどんでん返しは、ほぼ予想通りだったものの、清々しい気分になれるハッピーエンドで納得できるかもしれない。また主演の中川大志はじめ、クラスメイトの6人もそれぞれ個性的で、それなりに青春の匂いを漂わせていたので違和感もなかった。
 ということで、高校生はもちろん「青春時代をもう一度体験したい」と願っているおじさん、おばさんたちが観ても、そこそこ楽しめる映画に仕上がっていたことだけは間違いないと断言したい。


評:蔵研人

パーム・スプリングス

★★★☆
製作:2021年 米国 上映時間:90分 監督:マックス・バーバコウ

 タイトルの「パーム・スプリングス」とは、カリフォルニア州にある砂漠と山に囲まれたリゾート都市である。本作はそのパーム・スプリングスで行われる結婚式が舞台となっている。

 妹の結婚式だというのに、姉のサラだけは1人だけ浮かない面持ちであった。そこにお調子者で少し変わった男・ナイルズが登場。二人はいいムードになり、もう少しでSEXというときに突然弓を放つ男が現れる。それで謎の洞窟に逃げ込むと急に目覚め、毎日結婚式の朝に戻る「タイムループ」に閉じ込められてしまうのであった。一方のナイルズは、かなり以前からループにハマっており、今日までに数えきれないほど結婚式の日を繰り返していたのである。

 毎日同じ一日を繰り返すというタイム・ループもので、ファンタジーラブコメと言えば、1993年に公開された『恋はデジャ・ブ』を思い出す。ただ『恋はデジャ・ブ』のほうは、ループするのが主人公を演じたビル・マーレイ一人だったのに対し、本作ではなんと三人がループしているのだ。また少しおバカで下品な感があった。それにループを利用して、前回の失敗を回避するようなシーンが少なかったのが物足りない。

 それにしてもタイム・ループってどうして起こるのだろうか。それにループしている人は何度もやり直せるけど、ループしていない人たちの人生はどうなってしまうのだろうか。結局はいくつものパラレルワールドが存在することになるわけだが、なんだか理解不能だね。
 またループしている間は死なないし年を取らないし、金も恋人も自由自在のスーパーマンなのだから、現実に戻りたくないと考えたくなる。ただもしループが永遠に続くとしたら、やはり退屈になってしまうのだろうね。でももしそのループ周期が1日ではなく、『リプレイ』のように10年以上だとしたらどうかな……。

評:蔵研人

HELLO WORLD

★★★☆

製作:2019年 日本 上映時間:98分 監督:伊藤智彦

 『時をかける少女』や『サマーウォーズ』で助監督を務め、『ソードアート・オンライン』を手掛けた伊藤智彦監督によるSF系アニメである。前半は学園ロマンなのだが、後半になって「狐面」が登場すると、急遽ガチガチのSFに変貌してしまう。どちらかと言えば前半のほうが楽しく、後半は理解不能のハラハラドキドキ展開に終始すると言ってもよいだろう。

 2027年の京都。人見知りで引っ込み思案な男子高校生の堅書直実は、クラスメイトに馴染めず本だけが友達だった。だがクラスで、一行瑠璃という不愛想な少女と一緒に図書委員に選ばる。そして彼女と一緒に図書委員の仕事をしているうちに、だんだん彼女との距離が縮まってくるのだった。このあたりはまさに学園ロマンなのだ。

 そんな折にナオミという青年と出会う。ここらからだんだんSFの臭いが漂ってくる。さてそのナオミこそ、10年後の世界からやってきた未来の自分であった。彼は未来で瑠璃と結ばれるが、彼女を事故で失ってしまったのだという。直美はナオミと協力して、事故に遭った瑠璃の運命を変えようとするのだが……。このあと暫くすると、謎の狐面が登場し、学園ロマンは難解なSFものに衣替えしてしまうのだ。そして京都駅での大アクションシーンへと繋がってゆき、なんとSFパニックアニメへと昇華してゆくのである。

 本作は世界をデーターが集合した仮想空間とみなし、その不都合なデーターを書き換えよう試みるストーリーなのだが、斬新なようで斬新でもなく、分かり易いようで分かり難いのだ。ぶっちゃけあの『マトリックス』と『エヴァンゲリオン』と『インセプション』をごちゃまぜにした作品だと言えばどうだろうか。壮大なテーマを含んだストーリーとも言えるが、観客置いてけぼりの独りよがりの脚本とも言えそうである。

評:蔵研人

チョウたちの時間

★★☆
著者:山田正紀

 時間の本質とは何なのか、また超時空間なるものは存在するのかを問う、ある意味、哲学的なハードSF小説であった。と書けばかなり格好良いのだが、ぶっちゃけ風呂敷を広げ過ぎて収拾がつかなくなったと言えないこともない。

 本作はラノベということで文章は平易なものの、現実世界よりも未知の時空間での描写に終始し過ぎて、かなり難解な理論展開がなされるため、一度読んだくらいでは、なかなか理解出来ないかもしれない。従って「現代を描いた序盤」以外は殆ど理解不能、ストーリーも全く感情移入できず退屈極まりなかった。よくもまあ途中で投げ出さず、最後まで活字を追いかけた自分に拍手・拍手である。

 本作のタイトルもそうだが、なぜか時間とチョウを関連付けるようなSF小説や映画が多い。まるでチョウたちが、時間という蜜を探し求めてやって来るかのようである。ダジャレじゃないけれど、チョウには超能力があるのだろうか。

評:蔵研人

奇蹟の輝き4

著者:リチャード・マシスン

 短編ホラー作家のリチャード・マシスンが書いた二つの超次元恋愛長編小説のうちの一冊である。もう一冊はタイムトラベル恋愛小説の『ある日どこかで』で、両方とも映画化されている。
 本作は不慮の事故で命を落とした主人公クリスが「常夏の国」と呼ばれる天国へ辿り着くのだが、毎日のように最愛の妻アンのことばかり気になって落ち着かない状況が続く。そんな折現世では、やはり最愛の夫を亡くしたショックから立ち直れない妻のアンが自殺をしてしまうのだった。

 悲しいことに自殺をした者はすぐには天国へ向かうことが出来ない。そして長期間に亘って、自分の創り出した闇の世界である地獄に閉じ籠ってしまうのだ。
 そのことを知ったクリスは、愛するアンを地獄から助け出すために、恐ろしい闇の世界へと旅立つのである。だがその難行は未だかつて誰も成功したことがなかった。そして事実クリスも地獄では多くの苦難に遭遇し、やっと逢えたアンにも自分の存在を認めてもらえず、挫けそうになるのだった。

 熱烈な恋愛小説仕立てに調理しながら、実は『死後の世界』を科学的に説明してゆく構成は、かなりユニークな実験的手法と言えよう。そして見事にまとめられた思想的背景は、スウェーデン王国出身の科学者スウェーデンボルグが語った死後世界を彷彿させられる。またギリシャ神話や仏教にも染まっているように感じられる。

 いずれにせよ、死は誰にでも訪れるものである。だからこそ死に対して無頓着な人は少ないはず。本書は『死後世界の入門書』として、あるいは『死を恐れないための護符の書』として、全世界の人々にとって大いに役に立つはずである。死後世界について興味のある方、また逆に死後世界の存在を全く認めない方たちに、本書を一読されることをお薦めしたい。

 さて映画のほうはロビン・ウイリアムスの主演で1998年に上映されている。そしてクリストファー・リーヴ主演の『ある日どこかで』と同様かなり高評価のようだ。私はまだ映画化された『奇蹟の輝き』のほうは未観なので、是非ともレンタル屋でDVDを探し出そうと考えているところである。


評:蔵研人

時間離脱者

★★★☆

製作:2016年 韓国 上映時間:107分 監督:クァク・ジェヨン

 メガホンをとったのは『ラブストーリー』、『猟奇的な彼女』、『僕の彼女はサイボーグ』などで知られるクァク・ジェヨン監督であり、同監督としては2年振りの最新作である。ジャンル分けの難しい作品だが、大まかに括れば「ファンタジックスリラー」と言ったところであろうか。
 1983年1月1日と32年後の2015年1月1日の同時刻、同じ場所で同じように犯人から致命傷を受け、同じ病院に運ばれ、奇跡的に命を取り留めた二人の男性の物語である。

 過去の男は高校教師のジファンであり、未来の男のほうは刑事のゴヌであった。そしてその日から、ジファンは32年後のゴヌになった夢を見るのだが、ゴヌのほうも32年前のジファンになった夢を見るのである。
 こうして32年の時を隔てて、二人の話がパラレルに進行してゆくのだが、なんとさらに不思議なことに二人の彼女が全く瓜二つで、共に殺されてしまう運命なのであった。過去は回避できないものの、未来は何とかこの不幸な運命を回避しようと二人は協力することになるのだが、果たして運命を変えることが出来るのであろうか。

 実に練り込まれた複雑な脚本であり、出演者もチョ・ジョンソク、イム・スジョン、イ・ジヌクら韓国を代表する演技派俳優が集結している。ただ犯人が意外過ぎて因果関係に乏しく共感が得られないことと、まるでジェイソンやターミネーターのように不死身でしつこいところがかなり興ざめであった。このあたりの詰めが今一つ雑だったことが非常に残念であり、もったいないと思ったのは私だけであろうか。


評:蔵研人

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