タイムトラベル 本と映画とマンガ

 本ブログは、タイムトラベルファンのために、タイムトラベルを扱った小説や論文、そして映画やマンガなどを紹介しています。ぜひ気楽に立ち寄って、ご一読ください。

 タイムマシン、タイムトラベル、タイムスリップ、時間ループ、パラレルワールド、時間に関係する作品を収集しています。まだまだ積読だけで読んでいない作品がたくさんあるのですが、順次読破したら本ブログにて感想を発表してゆきますね。

時をとめた少女3

著者:ロバート・F・ヤング

 タイトルとカバーイラストがとても魅力的ではないか。と言っても、もちろん著者があの『たんぽぽ娘』のロバート・F・ヤングだから本書を購入したのである。なぜかヤングは、日本では人気があるのに本国アメリカではマイナーな作家のようである。よく分からないが、これもお国柄の違いであろうか……。

 本作に収められているのは、タイトルの『時をとめた少女』のほか、『わが愛はひとつ』、『真鍮の都』、『妖精の棲む樹』、『花崗岩の女神』、『赤い小さな学校』、『約束の惑星』の7編が収められている。なおこのうち冒頭の3作がタイムトラベル絡みの話である。
 個人的には、メル・ギブソン主演映画『フォーエヴァー・ヤング 時を越えた告白』そっくりの『わが愛はひとつ』が一番面白かった。また時間と愛を絡ませたラブファンタジーは、ヤングの真骨頂であり、本作は最高傑作『たんぽぽ娘』の原点なのかもしれないね。タイムトラベルファンなら、是非とも読み比べて欲しいものである。

評:蔵研人

ドラゴン・キングダム4

製作:2008年 米国 上映時間:105分 監督:ロブ・ミンコフ 主演:ジャッキー・チェン、ジェット・リー
 
 アメリカの少年が、現代のチャイナタウンで、孫悟空の如意棒と巡り合い、不良青年に追われるうちに、古代中国へとタイムスリップしてしまう。彼の役割は、ここで石化された孫悟空に、如意棒を渡すこと。
 孫悟空はもとより、不老不死の霊薬とか、天使とか仙人とか荒唐無稽な話と大げさなアクションシーンが続く。だがこの映画が全くチンケにならないのは、ジャッキー・チェンとジェット・リーの夢の競演があったからである。

 ジャッキー・チェンはあの酔挙の使い手、一方のジェット・リーは、白い僧衣姿で『少林寺』を彷彿させられた。とにかくこの二人のアクションは素晴らしく、まさに神技といえよう。この二人がいなかったら、たぶん子供騙しのつまらない映画で終わっていたかもしれない。それほど二人のアクション技術はハイレべルで、本格的に完成されていることを再認識してしまった。

 ラストに少年が現代に戻ってからの展開は、読み筋通りというか、こうした映画のお約束事といったところである。タイムトラべルものに分類されてはいるが、古代中国に行ったのは、気絶したときの夢とも考えられる。いずれにせよ、タイムトラべルだけに期待すると失望するので、あくまでもジャッキー・チェンとジェット・リーのアクション映画なのだという認識で本作を観る必要がある。

評:蔵研人

デモリションマン3

製作:1993年 米国 上映時間:115分 監督:マルコ・ブランビヤ

 デモリションマンとは『破壊者』のことである。それほどこの作品の主人公である刑事は、任務とはいえ破壊的な行動力に満ち溢れていると言うことであろう。さてその主役・デモリションマンことジョン・スパルタン刑事は、若き日の筋肉ムキムキのシルヴェスター・スタローンが演じている。

 本作はアクション映画であるが、SF映画でもある。それは冷凍スリープによるタイムトラベルが絡むからである。
 極悪人フェニックス逮捕のため、行き過ぎた破壊的行動を続けて人質30人を全員死亡させてしまったスパルタン。彼はその責任を問われて、70年間の冷凍刑に処せられてしまう。
 ところで未来社会は、全てがコンピューターに管理され、市民は快適な生活を送っている。またコクトー市長の政策によって犯罪や暴力は姿を消していた。一見とても素晴らしい世界のようだが、実は人々は軟弱化してしまい、武器もなく凶悪犯罪にも対処できなくなっていたのである。
 そんな折に、過去にスパルタン刑事が逮捕した極悪人フェニックスが、解凍され蘇って脱獄し、やりたい放題の大暴れをしてしまう。だが軟弱化している警察が束になってかかっても子ども扱いされどうにもならない。それでやむなく警察は、まだ刑期を迎えていないスパルタンを解凍して、フェニックスを逮捕させようとするのだった……。

 破壊的で暗い背景と荒唐無稽なストーリー展開を観ていると、あの『バットマン』を彷彿させられてしまった。さらにスタローンの暴れっぷりから『ロッキー』やら『ランボー』がオーバーラップしてしまうのだ。
 それはともかくとして、過去と未来のギャップの描き方は、まずまずであったがもう一捻りが欲しかったね。例えばサンドラ・ブロック演ずる相棒の女性警官レニーナが、実は自分の娘だったとか……。まあどうしてもスタローンの映画は、ストーリー展開よりアクション・アクションに塗り固まってしまうんだよな。

評:蔵研人

予知夢

★★★☆
著者:東野圭吾

 本作は『探偵ガリレオ』シリーズのうち五作をまとめたもので、全作がオカルト風味のミステリーである。つまり探偵ガリレオこと物理学助教授・湯川学が、オカルト事件を科学的に解明して行くという流れである。そしてこの湯川がホームズ役を担当するなら、友人の草薙刑事がワトスン役を演じているようだ。

 なお収録されているのは次の五編である。

第一章 夢想る (ゆめみる)
 16歳の少女の寝室に忍び込んだ男は、17年前からその少女と結ばれる運命にあったのだと供述する

第二章 霊視る (みえる)
 同時間に別の場所で殺害された彼女の霊を見た男の話の真偽

第三章 騒霊ぐ (さわぐ)
 ある時間になるとポルターガイスト現象を引き起こす家と殺人事件の関連

第四章 絞殺る (しめる)
 絞殺された男の娘が見た火の玉とは

第五章 予知る (しる)
 少女が見たのは現実なのか予知夢だったのか

 ざっとこんな感覚でストーリーは展開されてゆくのだが、薄くて読み易い割には論理的で品質の良い作品に仕上がっているので、興味の湧いた方は是非一読されてはいかがであろうか。

評:蔵研人

タイムマシンの作り方

★★★☆
著者:矢沢サイエンスオフィス

 本書は2001年9月に学研から刊行されたムック『タイムトラベルの謎』に大幅な加筆・改稿を加え、図版を一新して単行本化したものである。

 まず『宇宙論的タイムマシンの作り方』として、お馴染みの「ブラックホール」、「円筒型」、「ワームホール」、「宇宙ひも」などを利用したタイムトラベルを紹介している。ただしこれらは理論的には可能なものの、それこそ天文学的な時間と費用と労力を必要としているため現実的ではない。そこで考えられたのが、超光速粒子タキオンを使った「量子論的タイムマシン」や時空のゆがみを利用したワープ航法などである。もちろんこれらもSF的な発想と敬遠されがちだが、なんと米国のNASAやロシア・中国などでは、その実現に向かって真剣に研究しているというのだ。

 さて未来へのタイムトラベルについては、比較的簡単に実現可能なのだが、過去へのタイムトラベルは不可能だとされてきた。それは原因があり結果に繋がるという因果律がある限り、様々なタイムパラドックスを生じてしまうからである。だがそれはパラレルワールドの存在を認めることにより解消される。ただしその場合は、別次元の世界へ移動するわけだから、厳密には過去へのタイムトラベルではなく、別次元への移動ということになるらしい。

 このようなタッチで、小説・映画などの話も織り込みながら、難解な物理理論を紐解いているのだ。従って肌に馴染み、実に読み易いのだ。だからあっという間に読破してしまった。ことにラストに付録として、タイムトラベルの疑問をまとめて綴った『タイムマシンQ&A』が超・分かり易く面白かったね。


評:蔵研人

時空の巫女4

著者:今野敏

 自衛隊統合幕僚会議情報局の綾部は、米国防情報部から奇妙なレポートを受け取り困惑していた。そのレポートには、超常能力を持つ世界中の少年少女たちが同じ夢を見て怯えていると記されていたのである。そしてその夢とは、未だかつて見たこともない大爆発が延々と続き、地上の全てを焼き尽くし全ての人類が死に絶えるという恐怖の悪夢であった。
 同じ頃、原盤制作会社社長の飯島は、親会社の命令で新人アイドル発掘業務にとりかかることになる。そこでオーデションなどを開催するのだが、なかなかこれといった新人が見つからない。そんな中で偶然に、かつてネパールの生き神様だったチアキ・チェスとAV女優の池沢ちあきに辿り着く。なんと彼女たちの共通する「チアキ」という名前は、あの悪夢を見た少年少女たちが、救世主と崇める人物の名と一致していたのだった。

 とにかく構想が面白いし、文章が巧みで実に読み易い。そして自衛隊と芸能プロダクションとの異例な取り合わせや、その着眼点もただものではない気配を感じる。また会話の中で論じられる宇宙論や唯我論も、なかなか分かり易く興味深く解説されていた。著者の今野敏は実に多彩な知識ポケットを有しているようだ。ただひとつ文句を言えば、ラストが余りにも当たり前であっさりし過ぎていたことだろうか……。


評:蔵研人

サクラ咲く


著者:辻村深月
★★★☆
 本書は光文社の『BOOK WITH YOU』として発行されているので、対象読者は中高校生ということになる。だから非常に読み易く読書が苦手な人でも、あっという間に読破してしまうことだろう。
 また本書にはタイトルの『サクラ咲く』のほか『約束の場所、約束の時間』と『世界で一番美しい宝石』の三篇の中編が掲載されている。この中の『サクラ咲く』と『約束の場所、約束の時間』は中学生が主人公でやや児童書といった感が拭えないが、『世界で一番美しい宝石』は高校生が主人公で、内容的にも大人が読んでも全く違和感がないだろう。
 
 この本を買った動機は、タイムトラベル系の話だと知ったからである。ただ三作のうち『約束の場所、約束の時間』だけがタイムトラベル系のストーリーであり、タイムマシンで未来から跳んできた少年と現代の少年との心温まる友情の話であった。
 また『サクラ咲く』は、中学生の男女グループの友情と淡い恋心に、図書室の本に挟まれていたメモの謎がからんだちょっぴりミステリアスな話だったが、ラストに合唱する歌の歌詞がなかなか良かったね。
 そして『世界で一番美しい宝石』では、高校の映画同好会の部長が、「図書室の君」と呼ばれる立花亜麻里に製作映画のヒロインを依頼するのだが、何度頼んでもなかなか引き受けてくれない。それでも小さいときに読んだ「宝石職人の話」が描かれている児童書を探してくれたら、OKしてもよいという返事をもらうのだったが……。

 なんとこの立花亜麻里と、『サクラ咲く』に登場した図書室のメモを書いた謎の人物がなんとなくダブってくるのだ。もしかすると彼女たちは、若かりし頃の辻村深月の分身なのではないだろうか。ジュニア向けの中編集であるが、いい年をしたおじさんにも楽しめたのは嬉しかったね。

評:蔵研人

天使の歩廊4

著者:中村弦

 時代背景は明治末期から昭和初期まで、主人公は笠井泉二という建築家である。だが笠井は単なる建築家ではなく、悪魔的というか幻想的というのか、とにかく摩訶不思議な建物を設計するのだった。本書はその笠井泉二と彼が創作した建物を取り巻く話六作を繋いだ連作短編集である。

 著者の中村弦は本作にてデビューし、同時に「日本ファンタジーノベル大賞」を受賞し、選考委員たちから絶賛のエールを送られたという。それにしてもひとつひとつのストーリーは丁寧な構成で味わい深く、江戸川乱歩のようなおどろおどろしさや、SF的異次元世界の壮大感も漂ってくるではないか。
 ただ洗濯屋の次男として生まれた主人公が、なぜこれほど超天才的な能力を発揮できたのかの説明は一切なされていないし、ラストも曖昧なまま無理矢理閉めた感がある。もちろん謎めいた存在感に満ちているからこそファンタジーなのだが、一抹の違和感は拭いきれない。

 建築物自体はまさに物質の塊なのだが、そこにはなんとなく怨念や異様な雰囲気を感じることがある。それはある意味「別世界への入口」に通じるからなのだろうか。そして小説のメインテーマに特殊な建物を選んだことが、前述した選考委員たちの絶賛を浴びた一因なのかもしれない。それにしても、著者も本作の主人公同様ある種の天才なのだろう。

評:蔵研人

風が吹けば3

著者:加藤実秋

 高校生の健太が2009年から1984年にタイムスリップし、バイト先の雇用主である女性カメラマン和希の少女時代に遭遇し恋心を抱くという青春物語である。現代が2009年では既にもう現代自体も、過去の遺物になってしまっているのだが、古本なのでしかたがないのだ。
 また過去に跳んだ先で知り合ったのが暴走族たちで、健太も知らず知らずにその仲間になってしまう。そしてその仲間たちの一人が少女時代の和希であり、健太はその和希にほのかな恋心を抱いてしまう。また何人かの気になる友人たちもできるのである。またタイトルの意味は、ある風が吹くと共にタイムスリップするからであろう。

 さて本作の大半は、過去で健太が遭遇するベタな経験なのだが、本当の読み処はそれら過去の出来事ではない。終盤になって健太が現代に戻ったとき、過去に知り合った仲間たちがどのように成長しているのかと言うことに興味を惹かれるのだ。とは言っても、まあ大方が想像通りの展開だったのであるが、それがまた一番安心できる展開だったとも言えるだろう。
 いずれにせよ余り捻りのない素直なストーリーなので、ある意味『お子様ランチ』かもしれない。ただ実に読み易く、1984年を垣間見ながら一気に読めてしまうところがサッパリしていてベターだったかもしれない。ただなぜ1984年なのだろうか、それは著者が18歳の青春時代だったからであろう。従って1984年に思い入れのない人には、余り郷愁は感じられないかもしれないね……。

評:蔵研人

社交ダンスが終わった夜に3

著者:レイ・ブラッドベリ

 本書は現代米国文学界の大御所レイ・ブラッドベリが、2002年に上梓した短編集である。そしてこの短編集の中には、深夜の路面電車に乗り合わせた男女の会話を描き、ふわりとした余韻を漂わせたタイトル作をはじめとして全25作が収録されている。

 全編を通して言えることは、SF抒情詩人と評されている著者らしい「メタファーを多用したファンタジックな作品」で溢れ返っているということであった。従ってストーリーを追うというより、詩の音律を味わう気分で読まないと期待外れになるかもしれない。またSFと言っても、宇宙や未来や科学を描いたものはなく、どちらかというと日常的な事象を、メタファーによって塗り固めたという感がある。またそこがこの作家の好き嫌いの分岐点にもなるだろう。

 どちらかと言えば、私的には余り馴染まない作品が多く、最後まで読み通すのは難行であった。ただそんな中で『時の撚糸』など、タイムトラベル系の作品が2、3作混在していたのは嬉しかったかな。まあ好き嫌いは別として、全般的に「お洒落な短編集」と言えば良いのだろうか……。

評:蔵研人
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